誰にでも見られる生体力学的習癖

生体力学的習癖とは何でしょうか?

私たちの行動、体の使い方、顎の動かし方には癖があります。誰でも持っています。それを生体力学的習癖といいます。その中で口腔に関わるものを口腔習癖といいます。
どんな癖があるでしょうか?

[口腔習癖]口にかかわる癖

1. おしゃぶり
2. 指しゃぶり
3. 舌突出癖、低位舌
4. 咬爪癖、咬唇癖
5. ブラキシズム(歯ぎしり):かみしめ、くいしばり
6. 噛み癖(片側咀嚼癖、噛む力、噛み方、噛む速度、噛む時間、噛む力の強さ)
7. 口呼吸
8. おもちゃ、本などをかじる癖
9. 歯列接触癖
10. その他

[胎児の指しゃぶり]
胎児の指しゃぶり

お母さんのおなかの中で胎児は指を口にあてています。

[おしゃぶりをズラしてかじる癖]3歳5ヶ月女児
おしゃぶりをズラしてかじる癖

下顎左側偏位下の顎が左にズレています。

[咬爪癖+歯ぎしり]5歳11ヶ月女児
前歯部切縁の非対称性咬耗

前歯部切縁の非対称性咬耗

誰でも生体力学的習癖は二つ以上もっています。
前歯部切縁の非対称性咬耗
歯ぎしり(かみしめ、くいしばり)をしている幼児は意外に多くみられます。歯の萌出中、萌出完了後に,顎の位置確認のために行うようです。成人の8割に見られるという報告もありますが、本人やお母さんは気づいていないことが多いと思います。

口腔外力による習癖

1. 頬杖
2. 睡眠態癖(うつぶせ寝、横向き寝)
3. 枕の位置習慣(手枕)
4. 食事の姿勢、テレビを見る姿勢
5. 歩く、立つ、座る姿勢
6. ショルダーバッグをかける姿勢
7. その他

[左手頬杖]18歳男子 
18歳男子 下顎は左手に押されて右に1歯分ズレています。

下顎は左手に押されて右に1歯分ズレています。

習癖と日常生活動作

習癖と日常生活動作は厳密には区別できません
習癖を異常機能行動とし、日常生活動作を正常機能行動と仮定した場合、その境界線をどこに引くかは厳密には難しい問題です。例えば「噛み込む」という動きは習癖か正常な咀嚼運動か、という区別はどこでつけるのでしょうか?

例えば、食物が介在している場合に必要以上に力を入れた場合は異常機能行動にするか正常機能行動にするかは難しい問題でしょう。
従って広義には、全ての筋肉の動きは、生体力学的習癖として捉えることができます。また次のような見方もできます。

咀嚼癖とブラキシズムは食物が介在しているかどうかで区別できます。しかし、それによる影響、たとえば咬耗(咬合面のすり減り具合)を見たときそれが咀嚼癖によるものか歯ぎしりによるものかは明瞭には区別できません。

人の一生と生体力学的習癖

人間は胎児期から複数の生体力学的習癖の獲得、消失、矯正、持続を繰り返して

乳幼児期、
学童期、受験ー中学校、受験ー高校、
受験ー大学
就職
結婚
生活習慣病の獲得
老化
そして
死に至る
複数の生体力学的習癖の組み合わせと性状が一致する人はいません。
その人の複数の生体力学的習癖は、その人自身を表しています。

生体力学的習癖がもたらすもの

1.顎口腔の成長発育の左右差
2.下顎偏位
3.不正咬合
4.顎関節症
5.頸椎脊椎の彎曲
6.歯牙の咬耗、破折、圧下
7.保存修復物・補綴物の脱落、破折
8.その他

生体力学的習癖と非対称性

1.遺伝的もしくは先天的要因がなければ人間は生まれた時は、左右対称的であるが、生きていくうちに左右非対称性を獲得していきます。

2.左右の偏位は、前方偏位もしくは後方偏位、上方偏位もしくは下方偏位を招き、全体としては下顎骨そして上顎骨引いては頭部の骨全体(頭蓋顔面複合体)の立体構造の「ねじれ」となっていきます。

噛み癖とは

1.噛み方
2.噛む速度
3.噛む頻度
4.噛む力
5.左右の側性(masticatory laterality)
6.前噛み
7.奥噛み
8その他

この中で左右の側性つまり右噛みか左噛みかが左右非対称をもたらします。
ではいつ頃から噛み癖の側性が決まるのでしょうか?

乳幼児の習慣性咀嚼側

小児歯科学会誌から
3歳4ヶ月から5歳11ヶ月児を対象にして
46名(男児19名、女児27名)を調べた小児歯科学会誌の論文によると
(小児用下顎運動測定装置、.咀嚼ゼリーを用いた)

右側70.4%,左側29.6%
3歳から5歳後半までに明瞭になる


(「幼児における習慣性咀嚼側に関する研究」飯島英世,小児歯誌,40(1):114-118,2002)

乳幼児期にお母さんかお父さんあるいはおじいさんかおばあさんが気づかないと、また気づいても治せないとその癖はずっと続きます。その癖はその人にしみついて一体化しているように思えるほどです。できるだけ早い時期に治すことが大事です。通常、癖は複数ありますが、永く続くと、複合的に患者さんを原因がわからないままに苦しめることがあります。患者さんの中には、精神的疾患と誤解されている方もいます。

小学生の実態調査

小学校における生体力学的習癖の調査について

平成17年の小児歯科学会で発表した内容に基づいています。
乳幼児期で修正されなかった癖は、小学生になっても継続して認められます。

[むつ市立第二田名部小学校の概略]平成17年

1. 児童数636人(平成16年 674人)
2. 男児 323人(平成16年 349人)
3. 女児 324人(平成16年 325人)
4.むつ市最大規模の小学校
5.約40年前に新興住宅街に移転


[生体力学的習癖1 4年生以上 ]295人


歯ぎしり・くいしばり20.3%
口呼吸32.5%
テレビゲーム1時間以上30.2%
鼻づまり42.7%
下唇巻き込み9.5%

歯ぎしりの実人数はもっと多いと思われます。歯ぎしり(かみしめ•くいしばり)を意識しないでいる子どもたちは多いはずです

鼻づまりの子どもたちは口呼吸をします。口呼吸の実人数も数字以上に多いと思われます。テレビゲーム1時間以上30.2%ですが、10年後の平成27年現在は更に多くなっていると思います。下唇を巻き込んでる子どもたちは9.5%でしたが、無意識に行っている子どもたちはまだいるはずです。

[小学校高学年のくいしばり]歯の根の盛り上がりが明瞭です。

[小学校高学年のくいしばり]

[生体力学的習癖 2]4年生以上 295人


咬爪癖27.5%
指しゃぶり経験21.7%
おしゃぶり経験28.5%
硬い物嗜好52.2%
ナッツ類嗜好42.7%

爪を咬む癖は意外に多く、足の爪を咬む癖は高学年にも認められました。指しゃぶりやおしゃぶりは、咬爪癖に移行する場合があります。

[ショルダーバッグ]4年生以上 290人


右肩21.7%
左肩14.8%
両肩1.4%

右肩ショルダーバッグか左肩ショルダーバッグが続けば、肩の高さに左右差が生じ、背骨が狂っていきます。

[片側咀嚼癖]4年生以上 283人


右咀嚼癖23.3%
左咀嚼癖15.9%
両側噛み60.1%

右咀嚼癖か続けば、左右の眉毛を結ぶ線と左右の瞳を結ぶ線が右側に下がります。口角を結ぶ線は右側に上がります。もし左咀嚼癖か続けば、左右の眉毛を結ぶ線と左右の瞳を結ぶ線が左側に下がります。口角を結ぶ線は左側に上がります。その下の骨も変化します。

頭蓋顔面複合体の上半分は噛み癖側に下降し、下半分は噛み癖側に上がります。早めに気づいて、「左右均等にゆっくりと適度の力で噛む」ことが大事です。

指しゃぶり•おしゃぶり

[指しゃぶり]2歳5ヶ月女児

[指しゃぶり]2歳5ヶ月女児

[指しゃぶり]2歳5ヶ月女児

[指しゃぶり]2歳5ヶ月女児

[指しゃぶりの影響]

1.開 咬
 上図のように上の歯と下の歯との間にすき間があります。
2.歯列弓狭窄
 口蓋が指で押されて凹んで、歯のアーチが内側に倒れ込んで狭くなっています。
3.口蓋の陥凹
 指に押されて凹んでいます。
4.鼻腔の狭小
 口蓋の上は鼻腔なので、その分鼻腔が狭くなり、鼻呼吸がしにくくなります。
5.口呼吸
 口で呼吸する割合が高いと、口の中が乾燥して炎症が起きやすくなったり、ムシ歯になりやすくなります。またアレルゲンを直接吸い込むのでアレルギーを起こしやすくなります。
6.舌突出癖
 開咬が続くと舌突出癖を誘発します。更に開咬が治りにくくなります。

[指しゃぶりの本質]

本能と知能、行動と思考、事実と規範という対立的な側面の発展的な研究を行った有名な心理学者のジャン•ピアジェは次のように言っています。

[ジャン•ピアジェ]1896年生まれ
[ジャン•ピアジェ]1896年生まれ

1. 誕生と言語習得との間にわたる時期は、異常ともいうべき精神発達によって、特徴づけられる

2哺乳反射は、実行的な弁別や認知へと最後にその活動を一般化させる。乳児は乳を飲む時に乳を吸うことで満足せずに、何もないのにスパスパ吸う。たまたま、指にぶつかると、指を吸う。

3.次に、偶然示されたものは何でも、吸う。最後に、腕の動きを吸うことに反応させ、ついには、たいてい生後2ヶ月から、組織的に、子どもの拇指を口へもっていくようになる。世界は、本質的に吸うべき実在だ。

4. 生後2ヶ月ころから、組織的に、拇指を口へもっていくようになる。子どもは、その世界の一部を、吸うことに同化する。

(「思考の心理学」みすず書房)
 「赤ちゃんにとっては実現可能な行動は吸うことである。赤ちゃんの世界は吸うために存在する」と言っているわけです。

[5歳女児の指しゃぶり]3歳以後は起きがけか寝入りばなのみで程度は軽い。

[5歳女児の指しゃぶり]3歳以後は起きがけか寝入りばなのみで程度は軽い。

[5歳女児の指しゃぶり]3歳以後は起きがけか寝入りばなのみで程度は軽い。

[ヌークとピジョンのおしゃぶり]

[ヌーク]
ヌーク

ヌーク

[ピジョン]
ピジョン

ピジョン

[ヌークとピジョンのおしゃぶり]
ヌークとピジョンのおしゃぶり

[木のおしゃぶり]

木のおしゃぶり

[おしゃぶりをズラしてかじる癖]上唇小帯異常、下顎左側偏位

[おしゃぶりをズラしてかじる癖]上唇小帯異常、下顎左側偏位

[おしゃぶりを経験した小学校4年生]

[おしゃぶりを経験した小学校4年生]

[指しゃぶりとおしゃぶりについての結論]

1.おしゃぶりは一度使用すると、中止の困難な症例があり、生活環境の問題点に関わっています。

2.指しゃぶりは知能や思考の発達に深く関わっていて、おしゃぶりには代替効果があります。

3.おしゃぶりの使用が早すぎたり、中止が遅すぎると、上下顎や歯列の成長発育に悪影響を及ぼします。

4.おしゃぶりを使用した場合は1歳6ヶ月、遅くとも2歳までには止めさせた方がよいと考えられます。

5.指しゃぶり中止のための代替効果を期待する場合は、必要最低限度にとどめることを原則とします。

6.指しゃぶりは3歳以後には徐々にやめさせた方がよいと思われます。

口呼吸

[10歳女児]開口癖

[10歳女児]開口癖

やや狭窄歯列弓、歯肉炎が著明です。

やや狭窄歯列弓、歯肉炎が著明です

やや細長いアーチ

やや細長いアーチ

3⏋の萌出余地はありません。

歯肉炎が著明です

歯肉炎が著明です。



[分類]

1.鼻性口呼吸ー鼻閉塞やアデノイド肥大などの鼻咽腔の疾患による
       通気障害がある場合

2.歯性口呼吸ー上下顎前突や開咬などにより口唇閉鎖困難の場合

3.習慣性口呼吸ー両者が改善しても習慣として残る場合

[臨床所見]

1.アデノイド顔貌顔の横幅が狭く、歯列弓も細長い、唇が開いている、口蓋が深いなどの特徴をもつ顔です。「ポカンとした顔」と言えば想像がつくでしょう。

2.口唇の乾燥

3.オトガイ部の皮膚の皺襞

4.前歯部の増殖性歯肉炎と口呼吸線

5.特に上の前歯の裏側に堤防状隆起

6.深い口蓋

7.上下顎前突や開咬による口唇閉鎖困難

8.扁桃肥大


[小児期の口呼吸の治療]

1.必要に応じて耳鼻科医への相談

2.オーバージェットの改善
 唇を結びにくい出っ歯を治すという意味です

3.筋機能療法による口腔周囲筋の筋圧改善

「りっぷるくん」が役立ちます。院内器材を見て下さい。

4.正常呼吸への訓練
 普段も口を閉じて呼吸をする練習をします。

5.口を結んで食べる練習をする

6.必要に応じて寝るときはテープを上下に貼ります。


唇を巻き込む癖

1. 上の唇を巻き込む癖
2. 下の唇を巻き込む癖
3. 上下の唇を巻き込む癖

 の3種類あります。

[上の唇を巻き込む癖]小学校3年生女児

[上の唇を巻き込む癖]小学校3年生女児

[上唇を巻き込む癖による反対咬合]
上唇を巻き込む癖による反対咬合

[下の唇を巻き込む癖]12歳男児

[下の唇を巻き込む癖]12歳男児

下唇を巻き込む癖で下顎が後退しています。

下唇を巻き込む癖で下顎が後退しています

[30歳男性]下の唇を巻き込む癖、下の唇に上下の幅があります

[30歳男性]下の唇を巻き込む癖、下の唇に上下の幅があります。

長期の持続すると上下の前歯に前後的なすき間ができます。


[上下の唇を巻き込む癖]8歳男子

[上下の唇を巻き込む癖]8歳男子それだけでなく左右差もあります。

上下の唇に幅が見られます。それだけでなく左右差もあります。

上下の唇に幅が見られます。それだけでなく左右差もあります。

左側の巻き込みが強いので、左側の中切歯が内側に傾斜しています。

左側の巻き込みが強いので、左側の中切歯が内側に傾斜しています。

左側の巻き込みが強いので、左側の中切歯が内側に傾斜しています。

影響

1. 上の唇を巻き込む癖は反対咬合を引き起こします。

2. 下の唇を巻き込む癖は下顎を後退させます。

3. 下の唇を巻き込む癖が長期に持続すると、上の前歯と下の前歯の間に前後的なすき間ができます。

4.上下の唇を巻き込む癖は上下の前歯を内側に傾斜させます。

爪を咬む癖(咬爪癖)

種類

1. 手の爪咬み
2. 手と足の爪咬み

 の2種類あります。

手の爪咬み

[5歳男児]前歯部切縁の水平性咬耗
[5歳男児]前歯部切縁の水平性咬耗

[5歳男児]前歯部切縁の水平性咬耗


[5歳女児]前歯部弧状性咬耗
[5歳女児]前歯部弧状性咬耗


[3歳男児]前歯部凹性咬耗
[3歳男児]前歯部凹性咬耗

[3歳男児]前歯部凹性咬耗

[3歳男児]前歯部凹性咬耗

[3歳男児]前歯部凹性咬耗


[下顎を前に出して爪を咬む]

[下顎を前に出して爪を咬む]

[下顎を前に出して爪を咬む]

手と足の爪を咬む

[4歳男児]
[4歳男児]

[両手の爪を咬む]
[両手の爪を咬む]

[左足]
[左足]

[右足]
[左足]


[4歳女児]
歯の根が軽度に盛り上がっています。
[4歳女児]歯の根が軽度に盛り上がっています。

[下唇の面積が広い]
[下唇の面積が広い]

[下の唇を巻き込む癖も合併しています]
[下の唇を巻き込む癖も合併しています]

[右手]
[右手]

[左手]
[左手]

[右足]
[右足]

[左足]
[左足]

両手両足爪切りいらず、です。体がやわらかいですね。

頬杖

種類

1. 右手頬杖
2. 左手頬杖
3. 両手頬杖

 の3種類あります。

[右手頬杖]15歳女児

[右手頬杖]15歳女児

[右手頬杖で1/3歯分左側にズレています]
[右手頬杖で1/3歯分左側にズレています]

[右手頬杖で1/3歯分左側にズレています]

[543⏋が舌側にわずかに傾斜•転位しています]
[543⏋が舌側にわずかに傾斜•転位しています]



[下顎左側の犬歯が右手におされて遠心(後方)にわずかに移動しています]
[下顎左側の犬歯が右手におされて遠心(後方)にわずかに移動しています]

[左手頬杖]18歳男子、右側に1歯分ズレています。

[左手頬杖]18歳男子、右側に1歯分ズレています。





[右下の犬歯が上の犬歯よりも遠心(後方)にあります。]
[右下の犬歯が上の犬歯よりも遠心(後方)にあります。]

[左下の犬歯が上の犬歯よりも近心(前方)にあります。]
[左下の犬歯が上の犬歯よりも近心(前方)にあります。]

[両手頬杖]35歳男性、上下の歯列のアーチが狭く歪んでいます。

[両手頬杖]35歳男性、上下の歯列のアーチが狭く歪んでいます。

[上の歯は左右ともに内側(口蓋側)に転位•傾斜しています]
[上の歯は左右ともに内側(口蓋側)に転位•傾斜しています]

[上のアーチは側切歯から内側(口蓋側)に転位•傾斜しています]
[上のアーチは側切歯から内側(口蓋側)に転位•傾斜しています]

[下のアーチは狭く、側切歯から第一大臼歯まで舌側に転位しています]
[下のアーチは狭く、側切歯から第一大臼歯まで舌側に転位しています]

[左右ともにバッカライズドオクルージョンの傾向にあります]
[左右ともにバッカライズドオクルージョンの傾向にあります]

少なくとも小学生の時期に、右手頬杖、左手頬杖、両手頬杖に気づいてやめると、将来の歯列の狭小化と下顎骨の反対側への偏位を予防できます。左手頬杖で顎関節症に発展した患者さんもいます。

舌を突き出す癖

舌突出癖はなぜ起こるのでしょうか?

乳幼児歯科の「幼児嚥下と成人嚥下の違いわかりますか?」で下記のように説明しました。
ものを飲み込むときに、下の顎を安定(固定)する必要があります。上下の歯が生え揃って噛み合わせが確保されていれば、噛むことで下のアゴを安定することができます。これを成人嚥下といいます。
では上下の歯が生えそろわずに、上下の咬合が完成する前はどのように固定するのでしょうか?
舌を突き出すことによって、下のアゴを固定します。これを幼児嚥下といいます。

幼児嚥下から成人嚥下への転換が行われないと、舌突出癖が残存します。
【左前方舌突出癖】16歳女性
唇をなめる癖、下唇を巻き込む癖を合併
【左前方舌突出癖】16歳女性

【両側性舌側方突出癖】10歳男児
【両側性舌側方突出癖】10歳男児

【両側性舌側方突出癖】10歳男児

舌のトレーニングを治療に活用すると、上顎骨を作用して上の歯列弓を拡大できます。
【舌挙上の直接的な効果】
[「機能矯正」岩附 勝、2008]からの引用です
【舌挙上の直接的な効果】

【舌挙上の直接的な効果】

開口癖

はじめに

お母さんはご自分の子どもさんの唇をときどき観察して下さい。日常生活で口を開くことが多ければ、開口癖があると思った方がよろしいです。口呼吸がある人には開口癖があります。口呼吸については、「誰にでも見られる生体力学的習癖」の4番目に記載されている「口呼吸」をご覧下さい。

上下の前歯は、唇や頬の内側への力と、舌の外側への力のバランスが取れた位置に並びます。口唇の閉鎖力の弱い子どもさんは、上下の前歯が出っ歯(唇側傾斜が強い状態)になる傾向があります。
【9歳男児】
開口癖9歳男児



口唇の自然閉鎖のメカニズム

口唇閉鎖のメカニズムはどうなっているのでしょうか?

【参考文献】
東北大学の歯科矯正学講座の教授を務められました、三谷英夫先生が上梓された2015年10月20日初版発行の「矯正治療のためのアトラス 咬合と顎顔面頭蓋のバイオメカニクス」からアトラスと文章を引用して説明してみます。この本は、矯正治療をしない先生、特に義歯やブリッジなどの補綴診療にも役に立つ本です。私は北大出身ですが、この先生は学識が深く、正鵠を得たご講演は勉強になりました。

バイオメカニクスについて

バイオメカニクス(Biomechanics)」とはこの本によると、「身体の構造に関わってそれに働くさまざまな外的•内的な力の作用機序とその影響を取り扱う分野」です。端的に言いますと、生体力学的機序とその影響ということです。機序とは「しくみ」のことです。わかりやすく述べると、「生体に起こる力のしくみと、その結果どういうことが起こるか」という意味です。

口輪筋と頬筋

口の周りには口輪筋という筋肉があります。頬の筋肉を頬筋と言いますが、頬筋は口角のあたりから上半部の筋束は上の唇へ、下半部の筋束は下の唇に移行して口輪筋の形成に寄与します。歯列の形態形成は、主としてこの二つの筋肉と舌の力とのバランスによって決まります。
 「口輪筋は上下歯列の前歯部を被覆し、その生理的な緊縮力によって前歯部を内側に圧迫しているため、その強さに関わって前歯部の前後的な位置決定に深く関与」しています。
 頬筋は浅層と深層に分かれます。中央部浅層の筋束は、上部が下唇に、下部が上唇に入ることによって口角部で交叉しています。これを「頬筋筋束交叉」と言います。頬筋深層では上下大臼歯部の歯槽部外面に付着して、垂直に走行して、複雑な頬筋の運動に寄与しています。

口角挙筋と口角下制筋

下図のように、唇を開けたり閉じたりするときには、口角挙筋口角下制筋という二つの筋肉の働きが重要です。
口角挙筋の走行について説明します。眼球が入っている部分を眼窩といいます。口角挙筋は眼窩下部の犬歯窩より口角部に向かって下方に走行して下唇に埋入して正中部に至り、ここで反対側と吻合して口唇を持ち上げる働きをしています。
次に口角下制筋の走行について説明します。下の顎の下縁の前方部を下顎外斜線前方部と言います。下図のように、ここの比較的広い骨表面から上方に向けて走行し、上唇に埋入して正中部に至り、正中部で反対側と吻合して口唇を下に下げる働きをしています。



口唇は閉鎖されているか、離開されているかによって、上下前歯部に対する圧力が変わり、前歯の配列や前後的位置に大きく影響します。

「上唇は前歯唇面にせり上がり、一方下唇はせり下がって上下口唇は離開し、意志的に閉じない限り無意識時では口唇閉鎖ができない形態構造」になっています。つまり、意識的な口唇閉鎖の訓練が必要だということです。
お母さんは、子どもさんがポカンと口を開けていたら、口を閉じるように注意して上げて下さい。それを繰り返すだけでも、効果があります。

口唇閉鎖の測定と訓練

口唇閉鎖の訓練には「りっぷるくん」が役立ちます。当院では、来院している患者さん、幼児から高齢者の方まで400名以上の口唇閉鎖力の測定とトレーニングを行っています。
りっぷるくん

咬合力の癖①:噛み癖

細菌学で有名なパストゥールは立体化学の研究者でもありましたが、結晶学の研究から、「生体構造のオリジナリティーは左右非対称性にある」ことを発見しました。
( 「生命科学の歴史」 カンギレム 1977訳 法政大学出版局、2006.3.10)

また、東大の解剖学の教授であった養老孟司さんは、
1.基本的にからだは左右対称であるが、生きていくうちに非対称性を獲得する
2.実際の運動は左右非対称で重みづけや偏りを、生物は必ず持っている

 と言っています。
(「考えるヒト」養老孟司,1996)

更に「骨格の形態は長期の機能に適応して変化する」というウオルフの法則から言えば、右か左の噛み癖が長期に持続すれば、顔貌が変化して、その下の骨である頭蓋顔面複合体も変化するわけです。

噛み癖の顔の特徴を説明します。患者さんの顔を例として説明するわけにはいかないので、しつこいようですが11年前の私の顔で説明します。


11年前の院長

なぜ左右の眉毛を結ぶ線と瞳を結ぶ線が右下がりなのでしょうか。右の噛み癖があったからです。このときは左噛みに治している途中でしたので口角を結ぶ線がほぼ水平になっています。右噛み典型的な場合は右に上がります。

もし左噛みの場合は、左右の眉毛を結ぶ線と左右の瞳を結ぶ線は、左に下がります。左右の口角を結ぶ線は左に上がります。

このとき口腔内の所見はどうなっているでしょうか?
右の噛み癖が著明な初診時51歳の男性の特徴を説明します。

[口腔正面観]
[口腔正面観]

1.右側の咬合高径(上下の高さ)が左側に比べて短くなっています。
2.上下の正中は非噛み癖側に傾斜しています。
3.右下の臼歯部は舌側に傾斜しています。
4.噛み癖側はバッカライズドオクルージョンの傾向を示しています。
5.非噛み癖側はリンガライズドオクルージョンの傾向をしめしています。


6.咬合平面はねじれています。


噛み癖側の原則的な特徴

1.最初の欠損側であることが多い
よく使う側が早く欠損する確率が高くなります。

2.最初の補綴側であることが多い

補綴側とは、クラウンやブリッジが入っている側ということです。

3.補綴物が多い側

補綴物とはクラウンやブリッジのことです。

4.Chewing Cycleがスムーズな側(Gnathohexagraph Ⅱ)

院内器材を見て下さい。頭蓋骨のモデルの動きからわかります。無料で測定しています。

5.顆頭の反対側への動きのよくない側

顆頭が後上方にいく頻度が高いためです。顎関節のレントゲン撮影でわかります。

6.眉毛線と眼裂線(左右の瞳を結んだ線)が下がっている側

7.口角線が上がっている側

8.舌背が下がっている側

9.噛みやすい側、噛んだ感じのする側

10.咬合力の大きい側

院内器材の咬合力測定器で判定できます。無料です。

11.知覚過敏が長期に持続する側


12.保存修復物や補綴物の破損などのトラブルが多い側

よく使う側だからです。

13.鼻唇溝(豊齢線)の深い側

14.目の小さい側

よく使う側は引き締まっていくからです。

15.顔の幅の狭い側

16.上顎歯列幅は広く、下顎歯列幅は狭い側

17.その他

噛み癖側の正確な判定について①

上記の特徴に会っていれば判定できるかというとそう単純な問題ではありません。なぜかというと時間的因子が加わるからです。

例えば、左側が痛くて右側で噛んでいるとします。その状態で歯科医院を受診したとき、噛み癖側は右であると判定して正しいのでしょうか?

a. 10年間左側で噛んでいて1ヶ月前から痛くなって右で噛むようなった
 この場合は、右側は一時的な噛み癖側で過去9年11ヶ月は左側ですから左噛みの特徴が現れています。

b. 10年前から左側で噛んでいて、2−3年前から時折右側で噛むようになった。
 この場合も右側は一時的噛み癖側に過ぎません。

c. 20年前から右側で噛んでいたが、3年前から左側になり、1ヶ月前に左側に痛みが出たので、また右側に戻った。
 この場合は頭蓋顔面複合体の特徴は右噛みです。

上記の3ケースから言えるのは、過去の噛み癖側とその期間を把握しないと現在の正確な噛み癖側は判定できないことがわかります。
このことが理解できれば過去の噛み癖側の判定の論文の約半数は除外できます。

ところでスタートはどうでしょうか?これは最初に述べた小児歯科学会誌の論文が参考になります。

[乳幼児の習慣性咀嚼側]小児歯科学会誌から

3歳4ヶ月から5歳11ヶ月児を対象にして
46名(男児19名、女児27名)を調べた小児歯科学会誌の論文によると
(小児用下顎運動測定装置、.咀嚼ゼリーを用いた)

右側70.4%,
左側29.6%
3歳から5歳後半までに明瞭になる


(「幼児における習慣性咀嚼側に関する研究」飯島英世,小児歯誌,40(1):114-118,2002)

上記の論文からは、7割は右から、3割は左からスタートするということです。

噛み癖側の正確な判定について②

私の頭蓋顔面複合体のデータからは、頭蓋骨上部は噛み癖側に下がり、頭蓋骨下部は噛み癖側に上がります。

正貌セファロ非対称性分析法

PRL分析法(Parallel Right& Left Analysis)
1.小翼線:蝶形骨小翼とその延長線と左右の眼窩外側縁との交点を結んだ線
                   (噛み癖側に下降)
2.乳突線:左右の側頭骨乳様突起下縁を結んだ線
                   (噛み癖側に下降) 
3.顆頭線:両側の顆頭を結んだ線
                   (噛み癖側に上昇)
4.AN線:左右のAntegonionを結んだ線
                   (噛み癖側に上昇)
5.下顎骨の2相性のねじれ偏位
  第1相 オトガイ部の偏位なし,下顎下縁部の噛み癖側の上昇
  第2相 オトガイ部の偏位あり

6.正中基準線
は、篩骨鶏冠の中心と鼻中隔の上端(もしくは下端)を結ぶ線

正貌セファロ非対称性分析法

正貌セファロ非対称性分析法

頭蓋骨に影響しない短期間の側性は無視します。

RRRR type は過去に右噛みを継続してきたということです。
LLLL type は過去に左噛みを継続してきたということです。

代表的な7型
代表的な7型
代表的な7型
代表的な7型

RRLL typeは最初は右噛みが、途中から左噛みになったということです。
LLRR typeは最初は左噛みが、途中から右噛みになったということです。

PPRR typeは最初は結果として左右均等であったが、
       途中から右噛みになったということです。
PPLL typeは最初は結果として左右均等であったが、
       途中から左噛みになったということです。

頭蓋骨に影響する噛み癖は、長期間持続したことを意味し、咬合に影響するわけですから、頭蓋骨に影響しない短期間の噛み癖側は無視してもよいということになります。

噛み癖側の名称について

私はほぼ1年間左ばかり使って実験したことがあります。すると左の顎関節が痛くなって使えなくなりました。つまり、左の噛み癖といっても左だけでなく、左を高頻度に使っているということなのです。

従って、習慣性咀嚼側という名称ではなく、高頻度咀嚼側という表現がより適切だと思われます。左右の頻度が近似していれば、左右均等に咀嚼していると言ってもよいでしょう。厳密に左右均等に咀嚼することは不可能なのですから。

咬合力の癖②:ブラキシズム(かみしめ•くいしばり)

ブラキシズム(歯ぎしり)は誰でもしています。程度と時間の差があるだけです。それを実証した、北大の先輩である池田雅彦先生の論文を最後に紹介していますので、興味のある方は読んで下さい。

分類

Ⅰ.音のする歯ぎしり(Sound Bruxism)
1.グラインディング(grinding) 歯をギリギリとこすり合わせる
2.タッピング(tapping)歯をカチカチと鳴らす

.音のしない歯ぎしり(Silent Bruxism)
クレンチング(clenching)歯をぐっとかみしめて動かさない

音のする歯ぎしりをしている人は、家族や友人の方から指摘されて、「自分が歯ぎしりをしている」という認識があります。

音のしない歯ぎしりをしている人は、来院されてはじめて指摘されて気づく人が多いです。歯ぎしりの7割は音のしない歯ぎしりである「かみしめ•くいしばり」のクレンチングです。歯ぎしりの中で最も害があるのが、このクレンチングです。

歯ぎしりの治療の第一歩は「自分は歯ぎしりをしている」という認識をもつということです。自分では気づかずに音のしない歯ぎしりをしている人は多く見られます。

特徴

Ⅰ.音のする歯ぎしり(Sound Bruxism)
 1.咬耗(歯のすり減り)が明瞭である
 2.患者さんが自覚している場合が多い
 3.歯科医師も取り組みやすい。

Ⅱ.音のしない歯ぎしり(Silent Bruxism)
 1.咬耗(歯のすり減り)が不明瞭である
 2.ほとんどが自覚していない
 3.症状の出現まで時間がかかる(10−20年以上)
 4.不可逆的変化(気づいたときに元の状態に戻すことが困難)
 5.歯科医師が見逃している場合が多い

歯ぎしりが疑われる口腔内の所見•症状

1.歯の磨耗、咬耗、亀裂、破折、咬合面ファセット
①歯がすり減ったり、一部欠けたり、割れたりします。
②咬合面ファセットはshiny spotと呼ばれて光沢があります。
③歯の破折にはへアラインフラクチャーと呼ばれる髪の毛のように細いものもあります。

2.知覚過敏
①冷たいもの,熱いものがしみるという感じが長く続きます。
②しみて痛むとすぐ治まる場合と痛みが持続する場合があります。

3.外骨症
歯槽骨という歯の周りの骨が盛り上がってきます。

[42歳女性]
42歳女性

42歳女性


[52歳男性の著明な下顎隆起]
52歳男性の著明な下顎隆起

4.歯牙の動揺
歯がグラグラしてきます

5.歯根吸収
歯の根が細く短くなってきます

6.カリエスのない歯の根尖病変
特に下顎の前歯部にムシ歯がないのに根の先の骨が腐ってきます

7.保存修復物・補綴物の破損と脱離
詰めたもの、かぶせたものの破損と脱離の頻度が増えます。

8.咬合痛
咬んだときの痛みが起こるときもあります。

9.歯随炎の頻度が高い
歯がしみるから歯随炎に移行するときがあります。

10.歯牙欠損が連続的に起こる
特に下の7番が欠損しやすく、ついで6番の欠損するときがあります。

11.臼歯部咬合崩壊が著明である
上記のように7番、6番と臼歯部の咬合が崩壊していきます。

12.7番のP急発
特に7番(第二大臼歯)の動揺や膿みをもって、腫れたりすることがあります。

13.歯根形態の骨隆起
歯の根の形に骨が隆起します。

14.舌痛症,舌の潰瘍
歯ぎしりで舌が痛くなったり、潰瘍ができることがあります。

15.正中線の偏位
歯ぎしりが右か左に偏っている場合に起こります。

16.歯肉クレフト
歯肉の退縮

17.頬粘膜の圧痕、咬合線


18.クラウンの皺襞(シワ、Wrinkle)

19.歯周病の悪化
歯周病は確実に悪化します。

歯ぎしりが疑われる頭部•全身の所見•症状

1.朝起きると顎がだるい
寝ているときに歯ぎしりをすると、筋肉が疲労してだるくなります。

2.顎関節症の症状
歯ぎしりの力は顎の関節にもダメージを与えます。
特にクレンチングのときに起こりやすいと思います。

3.肩こり、腰痛、腕のしびれ
歯ぎしりが長期に持続すると、上記の症状が見られることがあります。

4.むちうち症状、倦怠感
歯ぎしりが長期に持続すると、合併することがあります。

5.顔面痛、頭痛
不定愁訴として起こっている場合があります。
原因不明の顔面痛や頭痛があったら、疑ってみる価値があります。

[歯ぎしりと寝る前の母乳によるムシ歯]2歳女児
[歯ぎしりと寝る前の母乳によるムシ歯]2歳女児

[歯ぎしりと寝る前の母乳によるムシ歯]2歳女児

[歯ぎしりと寝る前の母乳によるムシ歯]2歳女児

1.下顎遠心咬合
かみしめ•くいしばりのため下顎が後ろに下がっています

2.発育空隙がほとんどありません

3.下顎のCD(乳犬歯、第一乳臼歯)が舌側に傾斜しています

4.下顎乳前歯の軽度叢生(重なり合う歯)が認められます。

5.下顎第一乳臼歯の咬合面にムシ歯があります。

6.かみしめ•くいしばりのため咬合高径(噛み合わせの高さ)が
低下しています

7.歯根形態の軽度骨隆起(歯根の形で骨が盛り上がっています)

8.このまま生え変わると、永久歯の咬合高径も低下します。乳歯はどうせ生え変わるからと、楽観視しているお母さんがいますが、乳歯の咬合は永久歯の咬合に影響します。永久歯咬合を理想的に完成させるためには、乳歯のときに治療が必要です。

[5歳女児の歯ぎしり]左上の第一乳臼歯破折ごシームレスバンド装着
[5歳女児の歯ぎしり]左上の第一乳臼歯破折ごシームレスバンド装着

歯ぎしり装置装着。アダムスのクラスプで維持力確保
歯ぎしり装置装着

歯ぎしり装置装着

歯ぎしり装置装着

このタイプは固定式のため、成長発育中の子どもさんには長期には使えません。一時的な装置です。

小学校低学年•中学年は混合歯列期

混合歯列期とは乳歯と永久歯が入り混じった時期ということです

1. 低学年:①4前歯交換期
      ②6歳臼歯萌出期

2.中学年:側方歯群交換期

3.高学年:①永久歯列完成準備期
     ②12歳臼歯萌出開始期

[小学校1年生女児]上の歯が一直線にすり減っています。
[小学校1年生女児]上の歯が一直線にすり減っています。

[小学校1年生女児]上の歯が一直線にすり減っています。


[中学生男子の歯ぎしり]右下1番(中切歯)の破折
[中学生男子の歯ぎしり]右下1番(中切歯)の破折

[中学生男子の歯ぎしり]右下1番(中切歯)の破折

[歯ぎしり装置装着 MG21の2mmHC]
[歯ぎしり装置装着 MG21の2mmHC]

[24歳男性の歯ぎしり]炎症性骨吸収と垂直性骨吸収

[24歳男性の歯ぎしり]炎症性骨吸収と垂直性骨吸収



[31歳男性の歯ぎしり]左上2番(側切歯)の歯随炎を惹起

[31歳男性の歯ぎしり]左上2番(側切歯)の歯随炎を惹起



[34歳男性の歯ぎしり]噛むと下の前歯が痛いという主訴で来院

[34歳男性の歯ぎしり]噛むと下の前歯が痛いという主訴で来院

歯ぎしりによる下顎中切歯の根尖る病変。
歯髄失活(歯随の神経が壊死)による変色があります。

[34歳男性の歯ぎしり]噛むと下の前歯が痛いという主訴で来院

[58歳男性の歯ぎしり]左斜め前方へのこすり合わせる力が強い 左上1番の咬耗が激しい

[58歳男性の歯ぎしり]左斜め前方へのこすり合わせる力が強い 左上1番の咬耗が激しい


[58歳男性の歯ぎしり]左斜め前方へのこすり合わせる力が強い 左上1番の咬耗が激しい


[58歳男性の歯ぎしり]左斜め前方へのこすり合わせる力が強い 左上1番の咬耗が激しい


[58歳男性の歯ぎしり]左斜め前方へのこすり合わせる力が強い  左上1番の咬耗が激しい

左下の前歯が右下の前歯よりもすり減っています。

[58歳男性の歯ぎしり]左斜め前方へのこすり合わせる力が強い 左上1番の咬耗が激しい

[68歳男性の全体的な咬耗]Tooth Wearと言います。

[68歳男性の全体的な咬耗]Tooth Wearと言います。

[75歳女性の歯ぎしり]上下の歯槽骨が盛り上がっています。

[75歳女性の歯ぎしり]上下の歯槽骨が盛り上がっています。

歯ぎしりで歯の一部が欠けています。(アブフラクションといいます)

歯ぎしりで歯の一部が欠けています。(アブフラクションといいます)

7⏋(右下7番)のクラウン破折
7⏋(右下7番)のクラウン破折

7⏋(右下7番)のクラウン破折

参考文献

私がブラキシズム(歯ぎしり)の参考文献として、インプラント学会などで、若い先生方にすすめている本があります。1997年発行の日本歯科評論の臨時増刊号で「ブラキシズムの基礎と臨床—原因•診断•対応—」です。持っていない先生には、日本歯科評論を購読している、勉強していなさそうな先輩をつかまえて安く譲ってもらいなさい、とアドバイスしていました。その後、復刊されたようです。まだお持ちでない先生は買い求める価値のある本です。北大歯学部の歯周病•歯内療法の教授であった加藤煕先生と、ブラキシズムの専門家として著明な押見一先生と、北大の先輩で札幌で開業されている池田雅彦先生が編者となっています。

誰にでも見られるブラキシズム(歯ぎしり)

池田雅彦先生の論文は、「ブラキシズムと私の臨床診断法」と題してトップに掲載されています。この内容は、北大の先輩だから言うわけではありませんが、現在でも画期的な内容です。ブラキシズム(歯ぎしり)を日常診療できちんと診断している先生がきわめて少なかった当時は、内容が新しすぎてその意味が評価されなかったようです。現在でもブラキシズム(歯ぎしり)を正確に診断できる先生は少ないのですが。

下図は池田先生の論文からの引用です。237人を調べたらブラキシズム(歯ぎしり)をしていない人(B-0)はいないというデータです。

ブラキシズム(歯ぎしり)をしていない人(B-0)はいないというデータ

B-0 スプリント表面にファセットが全く無い状態
B-1 インクが軽度に剥げている状態からファセットが光っている状態
B-2 ファセットが削れている状態
B-3 ファセットが著しく深くえぐれている状態

つまり程度と時間の差があるだけで、誰でもブラキシズム(歯ぎしり)をしているということです。それがその人の適応能力を越えたときに症状が出るということなのです。その症状は、歯の歯折や咬耗だけでなく、ときに顎関節の症状や頭痛や顔面痛なども引き起こすのでしょう。おそらく上記のB-3の人たちがブラキシズム(歯ぎしり)をしていると断定されやすい人たちでしょう。B-2やB-1の人たちは軽視もしくは無視されてきました。この重要な事実は、この18年間、一般の歯科医師の先生方には認識されて来ませんでした。

服でも靴でも帽子でも、使い方によって長持ちするということは、日常生活の実践で誰でも知っていることです。それが保存修復物•補綴物(詰めたり、かぶせたりしたもの)も使い方によって長く持つかどうか決まります。ブラキシズム(歯ぎしり)があれば、その程度によって、詰めたもの•かぶせたものが長持ちしにくいということがわかります。ただ人によっては波があります。ブラキシズムが治ったかに見えるとき、また再発したように思われるときがあります。生活環境の変化とその人の適応能力に応じて、B-1からB-3の間を行ったり来たりしているのだと思います。