切らない痛くないインプラント治療法

はじめに

私がインプラント治療を開始したのは、弘前大学医学部歯科口腔外科講座から公立野辺地病院に歯科口腔外科医長として派遣された1984年(昭和59年)からです。31年前になります。トータルで1,000本以上埋入しました。現在は主としてアストラテックインプラントを使用しています。この会社は有名なブローネマルクにいた人たちが、その欠点を改良して立ち上げたものです。

Conical Seal Designの特徴

Conical Seal Design

1. 微小な動揺が起こらない。
2. 微小漏洩が起きにくい。
3. 円錐斜面により咬合力が理想的に分散される。
4. アバットメントがゆるみにくい。
5. フィクスチャーとアバットメント連結部の強度が高い。
6. セルフガイディング機構により、アバットメントの連結が容易である。
7. フィクスチャーとアバットメントの連結不良が起こりにくいため、X線で状態を確認する必要がない。

Conical Seal Designの特徴

咬む力つまり咬合力の分散が、インプラント治療の大事なポイントです。更にコニカルシール構造のために炎症性骨吸収も抑制するようになっています。

「低侵襲性インプラント埋入法」の詳細は、平成18年にインプラント学会で発表したものを最後の方に掲載していますので、ご覧下さい。術後の出血や痛みがないので、翌日の消毒のあとで旅行に出かけた人もいました。

CTを使わないインプラント診断法

2004年にインプラント学会で発表した内容を基に説明します。
私が開発した「ASトレース法」を中心に述べます。
パノラマ所見、口腔内所見、研究模型を総合的に観察•計測します。
この方法を使えばCTはほぼ不要です。どうしても必要なケースは、近くの総合病院を利用してCTを撮影して下さい。
私はこれまでCTの撮影を依頼したのは1例のみです。

Ⅰ.ASトレース法の手順と方法

【ASトレース法】Antegonion-Sigmoid Notch Trace Method の略称です。

【トレースセット】ASトレース法
ASトレース法【トレースセット】


[デジタルノギスは小数点2ケタまで表示される]
[デジタルノギスは小数点2ケタまで表示される]

1.ポータブルシャウカステン
2.デジタルノギス
3.トレース紙
4.HB鉛筆 と消しゴム
5.赤と青の鉛筆
6.大きい直角定規セット
7.小さい直角定規
8.セロテープ
9.電卓
10.ハサミ
11.レントゲン写真
12.研究模型
13.口腔内診査の結果

【頭位によるパノラマ画像の変化】
【頭位によるパノラマ画像の変化】

小児歯科臨床2003年4月号から

【バランスのよいパノラマ】
【バランスのよいパノラマ】

【バランスのよいパノラマ】 レントゲン


【全体的にフィルムから遠く照射線源に近い位置に頭部をおくと】
【全体的にフィルムから遠く照射線源に近い位置に頭部をおくと】

【全体的にフィルムから遠く照射線源に近い位置に頭部をおくと】 レントゲン


【右側がフィルムに近く、左側がフィルムから遠い】
【右側がフィルムに近く、左側がフィルムから遠い】

【右側がフィルムに近く、左側がフィルムから遠い】 レントゲン画像


【頭位によるパノラマ画像の特徴】
Ⅰ.頭位が照射線源に近いとき
1.パノラマ画像は拡大される
2.下顎下縁の彎曲がゆるやかになる
3.咬合平面がゆるやかなカーブを描く
4.スピーのカーブもゆるやかになる

Ⅱ.頭位がフィルムに近いとき
1.パノラマ画像は縮小される
2.下顎下縁の彎曲が強くなる
3.咬合平面の彎曲が強くなる
4.スピーのカーブも強くなる

【主な側面頭部X線規格写真計測点】
計測点69項目、58 Antegonion, 61 Sigmoid Notch
「頭部X線写真法の基礎」宮下邦彦、1999
「頭部X線写真法の基礎」宮下邦彦、1999

【ASトレース法の基準点】
Antegonion Gonionの前のくぼみの最高位点

Sigmoid Notch 下顎切痕の最深点

【安全域】
1.上顎ー洞底線より実長1mm下
       パノラマ1.25mm
     拡大パノラマ1.5mm

2.下顎ー下顎管より2mm上
パノラマ2.5mm
  拡大パノラマ3.0mm

【ASトレース法 Ⅰ】
1.AntegonionSigmoid Notchを基準点として二点を
 結んだ線を下顎枝垂直線とする。
2.パノラマフィルムの下縁の線に平行で、下顎下縁での接線を
 下顎下縁水平線とする。
3.Antegonionから下顎下縁水平線への垂線を下顎下縁垂直線とする。
4.下顎枝中央部で、下顎下縁水平線に平行な最短線を下顎枝水平線とする。
5.上記の4種類の基準線の長さの比較と、左右の4点を結んだ線から
 補正する。

【ASトレース法 Ⅱ】
1.埋入部位の骨縁、洞底線、鼻腔底、下顎管、オトガイ孔は
赤鉛筆でトレースする。

2.歯肉の辺縁は青鉛筆でトレースする。
3.抜歯予定の歯牙、除去予定のインプラントにはX印をつける。
4.埋入予定部位の骨内に、青鉛筆で太く描く。
5.その他のアウトラインや歯牙は必要に応じて
HB黒鉛筆でトレースする。
6.必要な計測値を記入する

Ⅱ.ASトレース法の実際 その1

【64歳女性】
右側がフィルムから遠く、左側が近い
【右側がフィルムから遠く、左側が近い】 レントゲン画像

右側が上で、左側が下
[右上4本埋入]
右上4番 3.5-17mm
  5番 4.0-13mm
  6番 ST4.5-11mm
  7番 ST4.5-15mm
右側が上で、左側が下

[埋入後約1ヶ月]
右側は実際の拡大率よりも、拡大されている
【右側は実際の拡大率よりも、拡大されている】 レントゲン写真

上顎Br.装着

[上部構造装着]アートグラスフルカバー
[上部構造装着]アートグラスフルカバー

Ⅲ.ASトレース法の解剖学的裏付け

【パノラマX線写真による下顎管の描出性についての検討】
Quintessence Dental Implantology 2002年 No.5
    描出状態の基準
描出度1:各区間の白線が完全に連続性を保ち観察できる
描出度2:各区間の白線が部分的に消失しているが判別可能
描出度3:各区間の白線の大部分が消失していて判別不可能

結果 男性290、女性270症例、23ー86歳
1.描出度3が57.7%であり、約60%にて不明瞭であった。
2.描出性は小臼歯部で低く、大臼歯に移行するに従い向上した
3.女性は描出性が低く、増齢的に描出性が低下した。
4.描出度3は無歯顎77.3,遊離端欠損62.1,中間欠損46.3%で、歯が喪失すると描出性は低下する。

【作図上の注意事項】
外斜線との距離と平行性
M3 第三大臼歯
M2 第二大臼歯
M1 第一大臼歯
下顎管の走行と下顎下縁

【オトガイ孔開口直前の屈曲】
稀には犬歯直下まで及ぶ
オチガイ孔直下まで上行することはない
オトガイ孔開口直前の屈曲

73%はオトガイ孔より前方でわん曲する
下歯槽神経のアンテリアルループ
1. 強彎 30%
2. 弱彎 40%
3. 直上 13%
オトガイ孔前方の湾曲

【下歯槽管の走行】
中心溝を結ぶ線より外側は走行しない
下歯槽管の走行

Ⅳ.ASトレース法の実際 その2

【他院でのバイオセラムインプラント失敗例】
初診時パノラマ
初診時パノラマ

【インプラント周囲の骨は破壊されている】
[インプラント周囲の骨は破壊されている]

[インプラント周囲の骨は破壊されている]

【左下345番にインプラント施行後7ヶ月】
[左下345番にインプラント施行後7ヶ月]

【右下345番インプラント埋入後3年】
左側は拡大され、上方に位置している
[右下345番インプラント埋入後3年]

【インプラント埋入後7年】右下アートグラスフルカバー
[インプラント埋入後7年]



【60歳男性】
左右のバランスはよいが、左側が上に位置する
【60歳男性】

【右下6番に2本埋入】
[右下6番に2本埋入]

上部構造装着後パノラマ画像

Ⅴ.下顎6番には原則として2本のインプラント埋入が必要

UCLA(University of Calfornia,Los,Angeles)でも実践されている
インプラントの本数

インプラントの本数

インプラントの本数について

[引用文献]
[引用文献]

[参考文献]
参考文献

Ⅵ.ASトレース法の実際 その3

【52歳男性上下12本1回埋入】
右側が拡大され、上方に位置する
【52歳男性上下12本1回埋入】

[アートグラスフルカバー]
[アートグラスフルカバー]


[65歳女性]右下4本、左下4本
左側が拡大され、上方に位置する
[65歳女性]左側が拡大され、上方に位置する

オトガイ孔の位置に目印

[全体的にフィルムに近い]

[全体的にフィルムに近い]


[61歳女性上下8本埋入]
右側が拡大され、やや上方に位置する
[61歳女性上下8本埋入]

[左上56番ソケットリフト]
ソケットリフトとは、骨を持ち上げて不足している骨を補う方法です。
[左上56番ソケットリフト]


[57歳男性上12本1回埋入]
左側が拡大され、上方に位置する
[57歳男性上12本1回埋入]

[右上5番ソケットリフト]
[右上5番ソケットリフト]


[60歳女性]上11本1回埋入
[60歳女性]上11本1回埋入

Ⅶ.CTの原理

[ヘリカルCTの原理]
「ヘリカルCTの読み方」新興医学出版社 2000
[Surface  Rendering  Image]

[Surface Rendering Image]

[頭頂部から見た頭蓋底]
[頭頂部から見た頭蓋底]

[内視法]気管分岐部
[内視法]気管分岐部

【マルチスライスCT】
体軸方向に複数の検出器を配列することにより、Z軸方向のX線の利用率を高めたもの
1.時間分解能の向上
2.広範な部位の撮影
3.体軸方向の空間分解能の向上
4.造影剤量の軽減
5.検査時間の短縮
6.スライス厚選択の自由度
7.待ち時間の短縮

(「マルチスライスCTの基礎と臨床プロトコール」診断と治療社 2000)

[マルチスライスCTのコンピュタールーム]
[マルチスライスCTのコンピュタールーム]

[マルチスライスCTの原理]
[マルチスライスCTの原理]

[マルチスライスCT症例総胆管拡張症]Volume rendering法
[マルチスライスCT症例総胆管拡張症]Volume rendering法

[マルチスライスCT症例 左側気管支内腺様嚢胞癌]
MPR冠状断と仮想気管支鏡
[マルチスライスCT症例 左側気管支内腺様嚢胞癌] MPR冠状断と仮想気管支鏡

Ⅷ.顎口腔領域におけるCT

[SimPlant 2千万]
[SimPlant 2千万]

[ニュ—トムによるパノラマ画像]
[ニュ—トムによるパノラマ画像]

[ニュートムSim Plant]
[ニュートムSim Plant]

[CB MercuRay]5千万円
[CB MercuRay]

[CB Mercuray によるパノラマ像]スライス厚 0.2mm
[CB  Mercuray  によるパノラマ像]

[SimPlant クロスセクショナル像]
[SimPlant クロスセクショナル像]

Ⅸ.歯科用CT

歯科用CT

撮影範囲 
高さ 30mm
直径 40mm

円柱形

被爆線量 パノラマの1/2
但し、顎を全体的に撮影すると少なくとも4倍になります。するとパノラマの2倍です。

[歯科用金属による偽像]
[歯科用金属による偽像]

[体動による偽像]
[体動による偽像]
体動による偽像は注意すれば防止できます。

[下顎管との正確な距離?]
[下顎管との正確な距離?]

[正確な埋入可能深度?]
[正確な埋入可能深度?]

[下顎管とインプラント体との距離]
画像が縮小されているため接触しているように見える
[下顎管とインプラント体との距離]

Ⅹ.CTの問題点

生涯研修セミナーとは、毎年日本歯科医師会が主催しているセミナーです。これは、日本歯科医師会が発行したDVDを基に作成しています。
[平成21年度生涯研修セミナー]
[平成21年度生涯研修セミナー]

実際は骨量が不足しているのに、骨量十分に見える
CTで顎骨の状態を正確に把握できるか?01

CTで顎骨の状態を正確に把握できるか?02

CTで顎骨の状態を正確に把握できるか?03

CTで顎骨の状態を正確に把握できるか?04

CTで顎骨の状態を正確に把握できるか?05

金属冠のアーチファクトを避ける
アーチファクトとは人工画像という意味です。実際にはない画像が映るという意味です。
金属冠のアーチファクトを避ける01

金属冠のアーチファクトを避ける02

[部分体積効果]Partial Volume Effect
部分容積効果とも言います。切り取った最小容積をボクセル(Voxel)と言いますが、その平均値がCT値として計測されます。
インプラント CTシュミレーションのすべて

[部分体積効果]

[金属アーチファクトその2]
[金属アーチファクトその2]

[実際は存在する骨が消えてしまうことがあります]
[実際は存在する骨が消えてしまうことがあります]

[実際は存在する骨が消えてしまうことがあります]02

[実際は骨があるのに、ないように見える]
実際は存在する骨がCTでは消えてしまう 1
実際は存在する骨がCTでは消えてしまう 1

実際は存在する骨がCTでは消えてしまう 2
実際は存在する骨がCTでは消えてしまう 2

Ⅺ.アナログはデジタルよりも解像度が高い

[平成25年度生涯研修セミナー]
[平成25年度生涯研修セミナー]

同一撮影法であれば、アナログはデジタルよりも解像度が高い
空間周波数が高いとうことは解像度が高いということを意味する
同一撮影法であれば、アナログはデジタルよりも解像度が高い

Ⅻ.結 論

インプラント歴31年、埋入本数1,000本以上の経験これまでの学習から次のように言えます。

【結  論 Ⅰ】
1.パノラマ画像は画像診断の基本であり、コストも安価であり、被爆線量も低い。
2.パノラマ画像は歪みを補正すれば、読影価値が高い。
3.パノラマ画像において6番相当部は正放線であり、歪みはほとんどない。
4.パノラマ画像は拡大像なので、相対的位置関係を把握しやすい。
5.顎骨のCT画像は縮小されるため、位置関係の把握は必ずしも正確ではない。
6.ほとんどの症例はパノラマ画像と、模型や口腔内診査で十分であり、CT画像を必要としない

【結 論 Ⅱ】
1. 全体の位置関係を把握しにくいので、パノラマ画像のない症例の供覧はインプラント埋入の適否を判断できない。
2. 大学病院や自衛隊病院などの歪みのないパノラマ画像や、骨量と骨幅が十分な症例には、パノラマ分析は必ずしも必要としない。しかし、
3. 口腔内所見と模型分析を照らし合わせながらパノラマトレースを行うと、手術に必要な条件が自然に頭に入り、インプラント手術が迅速かつ的確になる。
4. 現在は、アナログ画像の読影に熟達しないうちに、デジタルやCTに頼ってしまうという悪しき傾向があります。

【結論Ⅲ:CTを導入しない最大の理由
CTは高価だということです。安価なものでも一千数百万円、通常は3千万円から5千万円します。安価なものは全体像を映すことはできません。
ランニングコストもかかります。その経費は患者さんに請求されることになります。それは私の主義に反します。
より安い治療費で患者さんにインプラント治療を提供することが私の理想です。

インプラント骨接合部とねじの力学

2009年の補綴学会で発表した「インプラント補綴と生体力学」を基本に説明します。

インプラント補綴の生体力学

インプラントのトラブルは下記の部分で起こります。
  1. インプラントフィクスチャーの破折と動揺
  2. インプラントの沈下と脱落
  3. アバットメントスクリューの破折とゆるみ
  4. 上部構造の破折、ゆるみ、脱離
  5. スクリュー固定のスクリューのゆるみ

インプラント補綴のトラブルはどこで起こるか

接合部(連結部と界面)で起こります

原因は「繰り返し荷重による疲労破壊」です
これは荷重と応力集中の問題です

インプラント補綴の接合部

  1. インプラントー骨の界面
     ねじ類似構造
  2. アバットメントとインプラントとの連結部
     ねじ構造
  3. アバットメントと上部構造との連結部
     ねじ固定もしくはセメント固定
  4. 上部構造の連結部

下顎骨自体も弾性変形する

インプラント―骨の界面に応力が集中する
下顎骨自体も弾性変形する

骨ーインプラント界面

全ての面で結合しているわけではない
このことが、荷重に対する緩衝作用を生む
骨ーインプラント界面

骨接合率と血管分布数

  1. 骨接合率が高くなるほど血管分布数は減少する
  2. 周囲の広い範囲に血管が存在しないと仮定すると、一度作られた骨は新しい骨に置き換わることができず、
     細胞内成分のなくなった骨はミイラ骨として生き続けなければならない
  3. 微小循環からみると、インプラント界面はこれに近い状態にあると言える
(インプラントの微小循環.岸 好彰 他、120-126,
先端医療シリーズ・歯科医学1,歯科インプラント,2000)

血管結合組織の介在

  1. 利点:骨のremodellingと力の緩衝作用
  2. 機械研磨溝ー大きな孔
  3. プラズマ溶射ー小さな孔
  4. HAインプラントーほとんど見られない
(インプラント/骨の界面.井上孝 他、46-51,
先端医療シリーズ・歯科医学1,歯科インプラント,2000)

周囲組織の応力分布

  1. 人工歯根部の応力は頸部(上部構造の連結部付近から皮質骨と接する部位)に集中しやすい
  2. 周囲組織の応力部は皮質骨に集中しやすく、
     人工歯根底部に接する骨組織への応力集中はそれほど顕著ではない
  3. 人工歯根部の応力集中の激しい例では、周囲骨組織の応力値も大きい。
     臨界圧縮応力値に達すると、周囲骨組織に骨吸収が起こり、
     動揺と破折双方の危険性が高い
  4. インプラントと周囲組織の接合状態は応力分布に大きな影響を与える
(「インプラントの生体力学」堤定美,歯科インプラント,先端医療
シリーズ・歯科医学1,85-103,2000.)

インプラントー骨界面の接合状態を決定する因子

  1. 埋入方法
      1回法か2回法か
  2. インプラント(表面)の材質
  3. 生体の骨質

骨ーインプラント界面の接合状態

  1. 機械的嵌合効力
      1回法、圧縮され強固な結合
      ねじ力学的にはゆるみやすい
      暴力的、やむを得ず行うべき

  2. 生物学的結合力(Osseointegration)
      2回法、柔軟性が高く弾力性のある結合
      患者さんの治癒力にまかせる

インプラント補綴の接合部

接合部はねじ もしくはねじ類似構造となっています。
したがって、ねじの力学についての知識は不可欠です
  1. インプラントー骨の界面
      ねじ類似構造(スクリュータイプ)
  2. アバットメントとインプラントとの連結部
      ねじ構造
  3. アバットメントと上部構造との連結部
      ねじ固定もしくはセメント固定
  4. 上部構造の連結部

並目ねじと細目ねじとの比較

  1. ピッチが大きいねじを並目ねじ、
     ピッチが小さいねじを細目ねじという
  2. 疲労強度は細目ねじが優れている
  3. ねじ山荷重分担は細目ねじでより均一になり、
     静的破断強さは細目ねじが優れている
  4. 細目ねじの方がゆるみにくい
     (並目ねじは締めるときは大きなトルクが必要であり、
      小さなトルクでゆるみやすい。)
(酒井智次「増補ねじ締結概論」 2003)

斜面の原理

斜面の原理

斜面の原理②

ねじを締め付けるということは、この斜面上の物体を押し上げることに相当する。
斜面に沿う小さな力(Wsinβ)で大きな力(W)を得ることができる。
実際には斜面には摩擦があるから、斜面の摩擦係数をμとすれば、
物体(質量W)を持ち上げるのに必要な力は、Wsinβ+μWcosβ

回転ゆるみが起こりにくい条件

  1. ねじの精度が悪いー
     おねじとめねじの軸直角方向すきまが大きい
  2. 被締結体の厚さが大きい
  3. ねじはめ合い長さが小さい
  4. 軸力が大きい
  5. 座面の横すべり時の摩擦係数が大きい
  6. ボルトが細い(ボルト断面の二次モーメントが小さい)
     つまり、ワイドインプラントは小さなトルクでゆるみやすい

アバットメントスクリューの破壊やゆるみ

  1. ネジのへたり(非回転ゆるみ)
     (ねじの塑性変形もしくは微小凹凸の平坦化)
  2. インプラントー骨界面の結合が強固な場合
  3. インプラントコンポーネントの破折を招く

右ねじ単独植立の場合

下顎が動くので、回転方向は逆になる
左側に回転させる力がねじのゆるませる

  1. 右側方運動では6⏋は左側に回転させる力が働く
  2. 左側方運動では⎾6は右側に回転させる力が働く
  3. 右側方運動では6⏌は右側に回転させる力が働く
  4. 左側方運動では⎿6は左側に回転させる力が働く

連結内冠(応力緩和)

応力の集中する弱点をつくらない
連結内冠(応力緩和)

連結内冠(応力緩和)②

連結内冠(応力緩和)③

連結アートグラスフルカバー

連結アートグラスフルカバー

連結アートグラスフルカバー③

連結アートグラスフルカバー④

ジルコニアの検証

夢のホワイトメタルと言われる「ジルコニア」を検証する

主たる参考文献は「伴 清治先生の、ジルコニアの理工学的特徴、26-34最新CAD/CAMレストレーション、補綴臨床別冊」です。

【ジルコニアの組成と構造】
  ジルコニア(Zirconia)は金属元素ジルコニウムの安定酸化物である
2酸化ジルコニウム(ZrO2)の総称
  1. 金属元素ジルコニウム Ziruconium,Zr,原子番号40
  2. ジルコニアの原料はジルコン
  3. ジルコン(Zircon)は、ジルコニアとシリカの化合物.主成分はZrSiO2

【ジルコニアの製造方法】
  1. 中和共沈法
  2. 加水分解法
  3. アルコキシド法
  4. 塩類の熱分解法
  5. 水熱合成法
  6. 気相合成法

【医療用ジルコニア】
  1. 加水分解法
     ジルコニウム塩と安定化剤を混合溶解した溶液を加熱することにより、加水分解反応を行い、生成したゾルを焼成して粉末を得る
  2. 医療用ジルコニア原料は、日本企業がそのほとんどを世界に供給している
  3. 海外でブロックや修復物の形態に加工されたものが、日本に逆輸入されている

【ジルコニアの結晶構造】
img_01

【結晶構造の特徴】
  1. 立方晶
     ①2370°C以上の高温で安定な相
     ②2706°C溶融する
  2. 温度の低下に伴い、正方晶、単斜晶へと逐次相転移する
  3. 立方晶から正方晶への相転移では、約7.9%の体積収縮する
  4. 正方晶から単斜晶への相転移では、約4%の体積膨張を伴う

【安定化剤】
  1. CaO、Y2O3
  2. ある種の酸化物を添加することで、本来高温相である立方晶や正方晶を室温で安定させることができる
  3. 高温相安定化により、ジルコニアは高強度・高靭性を発現することができる

【安定化の効果】
  1. 格子常数効果
     Ce4+やU4+などのようにZr4+よりも大きいイオン半径を固溶することで格子常数が増大する
  2. 酸素イオン空孔効果
     Ca2+やY3+などのようにZr4+より価数が小さいイオンを添加することにより酸素イオン空孔が導入される

【陰イオン空孔生成の効果】
  1. イオン伝導性を高める
  2. 希土類酸化物は「酸素イオン空孔効果」が大きい
【Y2O3の添加】
  1. 4-7mol添加
     ①部分安定化型ジルコニア(PSZ)が生成する
     ②PSZ はおもに立方晶で構成されていて、正方晶が立方晶の粒界や粒内に部分的に生成されている
  2. 2-3molの添加
     室温において、ほぼ100%正方晶ジルコニアで構成され,正方晶ジルコニア多結晶体TZPと呼ばれている

【正方晶ジルコニア多結晶体】
  1. Tetragonal Zirconia Polycrystal:TZP
  2. ジルコニアの機械的性質はTZPの正方晶含有率に依存する
  3. TZPの正方晶含有率は
     ①粒径
     ②Y2O3含有量
     ③マトリックスに負荷されたひずみ量に依存する

【3mol%Y-TZPの焼結体表面】
走査型電子顕微鏡写真、平均粒径 約0.32μm
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【双方向ナノ複合化】
  1. 1998年、松下電工と大阪大学
  2. 特性改善ー曲げ強の改善、高い靭性値
  3. Ce-TZP/Al2O3ナノ複合体
  4. Al2O3が30vol%含まれている
  5. 10mol%のCeO2で安定化したCe-TZP粒子内に数百nmサイズのAl2O3粒子が取り込まれている
  6. Al2O3粒子内にも数百nmサイズの微細なCe-TZP粒子が取り込まれている
  7. 取り込まれた第2層粒子の周囲には残留応力によりサブ粒界ができ仮想的に粒径が小さくなる

【サブ粒界】
通常の粒界では不純物が入りやすく、強度を低下させる原因となるが、サブ粒界では不純物がなく粒界がきわめて強くなる

【結晶粒子の複合化】
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【Ce-TZP/Al2O3ナノ複合体】
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【ジルコニアの機械的性質】
  1. 応力誘起相転移
  2. クラックの彎曲、偏向
  3. マイクロクラッキング
  4. 表面圧縮応力

【応力誘起相変態強化機構】
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【ホワイトメタルの所以】
  1. ジルコニアはセラミックスであるのに、金属のような挙動を示す
  2. 今までの歯科修復材料として用いられてきたいかなるセラミックス系素材にもない特性を示す
  3. 複合化により、クラックの彎曲や偏向、マイクロクラッキングの効果が高くなる

【ジルコニアの物理的性質】
  1. 熱伝導度がきわめて低い
  2. 熱膨張係数はセラミックスの中では比較的大きく、チタンよりわずかに大きい
  3. 比熱はセラミックスのなかでは比較的小さく、チタンに近似している
  4. 融点、沸点も高い
  5. 高融点結晶にとって最も重要なのは構造の対称性
  6. ダイヤモンドに匹敵する大きな屈折率を示す
  7. 多結晶体は大きな屈折率に依存する散乱により、光透過性は良好ではない
  8. チタンよりもX線造影性が、きわめて良好である

【ジルコニアのX線造影性】
img_06

【ジルコニアの化学的性質】
  1. 酸性、塩基性、酸化性、還元性の四つの化学的性質を合わせ持った唯一の純粋酸化物
  2. 触媒に広く利用されている
  3. 液体クロマトグラフィーのカラムとしても活用されている
  4. 耐酸性については、種々の報告があり、一貫した結論は得られていない

【ジルコニアの水分存在下での相変態による劣化】
  1. 水によるY-TZPの劣化のメカニズム
  2. 正方晶から単斜晶への相転移により結晶格子体積が増大し、クラックが生ずる
  3. 最も重要なのは局所的なひずみの蓄積である
  4. Y-TZPは、水分存在下では低温でも相変態が進行すると確証されている
  5. 低温劣化とは工業界での表現で、100°C以上で生ずる現象であり、通常の口腔内環境では生じにくいと考えられる

【Y-TZPの劣化のメカニズム】
第1段階:表面へのH20の化学吸着
第2段階:H2Oの解離によりZr-OH結合やY-0H結合が形成し、表面の格子ひずみが生成
第3段階:表面および格子中へのOH-の拡散によるひずみの蓄積
第4段階:正方晶マトリックス中のひずみの蓄積部分から単斜晶の核形成

【ジルコニア表面における低温劣化の模式図】
img_07

【ジルコニアの生物学的性質】
  1. 純チタンと同程度の生体適合性を有していると考えられる
  2. 耐食性が高く、体内で化学的にきわめて安定しており、イオンの溶出や細胞への為害作用は報告されていない
  3. アルミナおよび表面処理をしていないチタンと同様に生体不活性材料であると考えられる
  4. 細菌の付着はチタンよりも少なく、プラークの付着が少ないとみなされている

【ジルコニアの特徴】
 断面2×2mm,長さ20mmの角棒
 3点曲げ試験
 支点間距離10mm
  1. ジルコニア 600−700N
  2. アルミナ 480N
  3. 純チタン棒 370Nで変形が始まるが、変位が2mmを越えても破壊しない
  4. アクリルレジン 200N

【ジルコニアの相変態】

  1. 応力がかかるとジルコニアは相変態する
  2. 研磨をしても起こる
  3. サンドブラスト処理をしても起こる
  4. 作業後必ず熱処理する

畑中のジルコニアについての結論

  1. インプラントの土台である骨の頭蓋顔面複合体の偏位•変形を考えると、ジルコニアの長期の安定性は低いと思われます。
  2. 今年(2015)のインプラント学会でもジルコニアアバットメントの装着後1ヶ月で破折した症例が報告されています。
  3. インプラントの土台である頭蓋顔面複合体の偏位•変形を軽視した材料や方法は、長期に安定しないと思われます。

究極の低侵襲インプラント埋入法

(Ultimate Minimum Invasive Implantation)

第26回日本口腔インプラント学会 東北北海道支部総会にて発表
  於 北海道歯科医師会館 H18.10.7-8

インプラント治療の3条件

1.力のコントロールに基づくインプラントの一般的理論
  学会発表、論文に多い
2.術者の身体感覚に基づく身体能力
  身体論的考察
3.患者さんの個人的特性(複数の生体力学的習癖)

インプラント治療の8段階

1.診断と治療計画
2.術前の準備
3.インプラント埋入手術
4.二次手術までの患者管理
5.二次手術
6.必要に応じてプロビジョナル
7.上部構造装着
8.上部構造装着後の患者管理

インプラント埋入手術の7段階

STEP1.ラバーストッパーをつけた33ゲージの浸麻針で、歯肉の厚さを計測しながら麻酔

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STEP2.予定埋入深度に歯肉の厚さを加える

次へ

STEP3.トレフィンバーを歯肉に当てて予備練習をする

次へ

STEP4.トレフィンバーで歯肉を貫通して、骨にアクセスホールを形成する

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STEP5.ツイストドリル、コルチカルドリルで埋入窩の形成

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STEP6.埋入予定のインプラントフィクスチャーのアバットメント結合部に抗生物質の軟膏を入れる

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STEP7.調整してあったカバースクリューを装着してカバースクリュードライバーで埋入

インプラント治療の説明

1.ラバーストッパーをつけて歯肉の厚さを計測しながら浸潤麻酔
ラバーストッパーをつけて歯肉の厚さを計測しながら浸潤麻酔


2.トレフィンバーによるアクセスホールの形成と骨の採取
トレフィンバーによるアクセスホールの形成と骨の採取

トレフィンバー 骨片採取
ドリリング
深さの計測

トレフィンバーの利点

1.すべらない
2.速い
3.埋入方向を確認しやすい
4.後のドリリングが容易である
5.骨片を採取できる
6.オステオトームを使用して
 骨幅の拡大がしやすくなる
7.埋入部位の骨の状態が確認できる

トレフィンバーによる植立方向の確認

トレフィンバーによる植立方向の確認

⎾667埋入直後  Offset Arrangement

667埋入直後  Offset Arrangement

Dr.コーシー サイナスリフティングキット

Dr.コーシー サイナスリフティングキット

C1 サイナストレフィン

C1 サイナストレフィン

サイナストレフィン

サイナストレフィン

長さ 7.8mm
外径 2.8mm
内径 1.9mm

サイナストレフィンの利点

1.歯肉が厚くても軟らかくてもブレない
2.1回の操作で終了
3.複数埋入するときは2本用意しておく
4.開口量が小さくても使用できる

サイナストレフィンの利点

手術時の姿勢は自然体で

1.足は肩幅の広さ
2.肩の力を抜く
3.背筋を伸ばす
4.膝を軽く曲げる
5.両足に均等に体重 をかける

自然体

1.背筋を伸ばし肩の力を抜く
2.まず手のひらを上にしてその後返す
3.疲れない
4.腰で水平に移動できる
5.体幹をねじらない

具体的にどうするのか

1.肩、腕、手、指先の力を抜く
  力が入るとドリルの往復の軌道にブレが生じやすい
2.体幹をねじらない
  ねじると視覚の誤差を生じやすい
3.支点をつくらない連続技
  ドリル全体が手首を中心として回転しない

古武術の甲野善紀の言葉

身体全体をそれぞれに独立させて動かしつつ、それらの動きによって全体としての働きが生まれるようにする。流れる水のように動く。
支点をつくらないと故障しないし、疲れにくい。

インプラント治療の注意点

支点をつくらない連続技

1本だけの埋入は支点をつくりやすい
複数のインプラントを連続的に埋入すると支点をつくりにくい

視覚のズレに注意する

体に優しいインプラント治療 視覚のズレに注意する

歯を欠損した骨の質

歯牙を欠損した骨は、
  辺縁性歯周炎、
  根尖性歯周炎、
  硬化性骨炎
などを経験し、
咬合圧が加わらなくなったために、構造的に脆弱になっている
骨質は一様ではない

ドリリング時の注意

ドリリングの途中で、骨が硬いという感触があるとき
1.新しいドリルで押し付けないようにドリリングする
2.それでも無理なときは、そこまでの短いフィクスチャーに変更する

成功率が高いフィクスチャーの長さは

10mm以上
 10ー15mmより長くても短くても
 十分な配慮が必要である

成功率が高いフィクスチャーの径

3.5ー4.5mm
  直径が5ー6mmになると
 成功率が低下する(77.3%)

上記の参考文献

「5092本のインプラント臨床成績:インプラント補綴、材料および骨構に関する臨床成績」
ユニバーサルインプラント研究所 北村 亮
日本口腔インプラント学会誌 2001年14巻2号(53ー73)

身体感覚の限界を知る

私の身体感覚の限界は  長さ 上顎骨 17mm 
               下顎骨  15mm
               直径     5mm である
この範囲を超えるとブレが生じやすい
自分の身体感覚の限界を知っておく
我々は往復の軌道を一致させる神の手を持っていない

インプラント治療の症例

62歳男性:766⏋埋入

STEP1 ASトレース法による治療計画
STEP1 ASトレース法による治療計画


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STEP2 術後1ヶ月
STEP2 術後1ヶ月


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STEP3 埋入直後
STEP3 埋入直後


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STEP4 埋入後
STEP4 埋入後


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STEP5
歯軋り防止装置装着
STEP5 歯軋り防止装置装着

この症例は重度のブラキサーである
MG21  3mm
下顎骨ねじれ偏位の補正にもなる

【ポリオレフィン系材料の特徴(MG21)】
1.化学的に安定
2.無味無臭
3.環境ホルモンは含まれていない
4.生体への安全性は高い
5.加熱溶着性に優れている
6.剥離強度が高い
7.吸水性はほぼゼロ
(「スポーツマウスガードハンドブック」医学情報社,2004)



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STEP6 インプラント埋入後の咬合力 913.7N:R437.9N,L475.8N
インプラント埋入後の咬合力 913.7N:R437.9N,L475.8N


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STEP7 
装着後7年
 STEP6 装着後7年

右噛みの癖が時々顔を見せる

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STEP8 装着後2週間で6⏋アートグラス前装部破損
STEP7 装着後2週間で6⏋アートグラス前装部破損


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STEP9 犬歯誘導が確保されている
犬歯誘導が確保されている


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STEP10 術後7年
術後7年:インプラント周囲に骨吸収は認められない

インプラント周囲に骨吸収は認められない

切らない痛くないインプラント埋入手術の長所と欠点

長所

1.患者さんに恐怖感を与えない
2.骨のダメージを最小限に抑える
3.切らない
4.縫わない
5.腫れない
6.痛くない
7.ほとんど出血しない
8.CTをほとんど必要としない(ASトレース法)
9.消毒・麻酔後の1本埋入時間 2−7分

欠点

1.歯肉の厚みと埋入深度を感覚的に把握しにくい
2.冷却と洗浄のための生食が、切開にくらべて埋入窩に到達しにくい
3.患者さんへの負担が軽いので、術後の注意を怠ることがある
4.埋入時間が早すぎて、本当に埋入したかどうか疑われることがある

頭蓋骨の特徴

下顎が左側に第1相のねじれ偏位を起こしている

頭蓋骨の特徴

1.
上下顎側隙は左側がわずかに狭い
2.P:小翼線は平行
3.R:乳様突起下縁線は右側が下位
4.L:左側のAntegonionが上位に位置する
5.L:下顎下縁線は左側が上位に位置する

下顎6番には原則として2本必要 UCLA

下顎6番には原則として2本必要 UCLA

インプラントの維持力

1.機械的嵌合効力
 1回法は機械的勘合効力だけの力で維持される
2.生物学的結合力
 2回法は、さらにインプラントと骨の生物学的結合力も期待できる

術中のモニター「パルスオキシメーター」

術中のモニター:パルスオキシメーター

切らない痛くないインプラント埋入手術

1.当日の全身状態の確認
2.抗生物質の内服
3.消毒・圧布被覆
4.ラバーストッパーをつけた33ゲージの浸麻針で、歯肉の厚さを計測しながら麻酔
5.予定埋入深度に歯肉の厚さを加える
6.トレフィンバーを歯肉に当てて予備練習をする
7.トレフィンバーで歯肉を貫通して、骨にアクセスホールを形成する
8.ツイストドリル、コルチカルドリルで埋入窩の形成
9.埋入予定のインプラントフィクスチャーのアバットメント結合部に抗生物質の軟膏を入れる
10.調整してあったカバースクリューを装着してカバースクリュードライバーで埋入
11.抗生物質その他の点滴静注
12.全身・局所の状態を確認して帰宅

この術式で埋入すると開口量40mm以下でも無理なく埋入できます。

インプラント周囲組織と生体力学的適合性

インプラントと周囲組織との結合の問題は、結合力が強ければよいという単純な問題ではありません。次の二つの点が大事です。

  1. インプラントと周囲組織と生体力学的適合性が高いこと
  2. インプラント周囲に血管結合組織が豊富に存在すること

【インプラントと周囲組織と生体力学的適合性が高いこと】
生体力学的適合性が高いということは、インプラントと周囲組織との力学的挙動が一致するということです。
いくら結合力が強くても周囲組織との力学的挙動が一致しないとその結合は破壊されます。むしろ結合力の強いものほど破壊されやすいと言えるでしょう。

【インプラント周囲に血管結合組織が豊富に存在すること】
血管結合組織が乏しいと、咬合圧に対する適応能力が低下します。
インプラント周囲の骨組織の改造能力が低いと、咬合力に対する適応能力が低下して、骨破壊現象が起きやすくなります。

まとめ

インプラントと周囲組織との生体力学的適合性が高く、インプラント周囲の骨の改造能力が高いこと、つまり血管結合組織が豊富に存在することは、インプラントの長期安定性にとって必要不可欠の条件なのです。
単に結合力が高いだけだと、結合が破壊されやすく、周囲の骨組織の血管結合組織は乏しくなります。インプラントと骨組織との結合の強さについては、周囲組織との相互作用で検討する必要があります


以下に、参考文献をまとめたものを整理してあります。読んでみて下さい。

【生体力学的適合性】
  1. 接合する生体組織と力学的整合性を持って長期間良好に機能すること
  2. インプラント自体の強度や生体組織との結合の強さの問題よりも、むしろ力学的挙動が一致すること、あるいは、インプラントの装着によって生体組織に発生する応力が正常な生理的範囲にあることを理想としている
  3. 連結部や界面でのひずみの調和
  4. 変形能の一致を図ることが成功への鍵を握る
(「インプラントの生体力学」堤定美,歯科インプラント,先端医療シリーズ・歯科医学1,85-103,2000.)

【生体組織の強度と弾性係数】
  1. 生体組織は低い弾性係数のわりに、高い強度を有する
  2. 人工材料は強度を高くすれば弾性係数も上昇する
  3. 高強度低弾性係数の、強くてしなやかな材料が理想的
【インプラント周囲の骨接触率と骨占有率】
矢印は非石灰化部分
インプラント周囲の骨接触率と骨占有率
(ヒトに植立されたチタンインプラントー骨界面の経年的な
組織形態学的観察.坪井陽一 他、52-56,
先端医療シリーズ・歯科医学1,歯科インプラント,2000)

【骨接触率と占有率】
  1. 機能インプラント
      接触率 占有率
     上顎 52.2%, 72.6%
     下顎 73.7%, 81.7%
  2. 非機能インプラント
     下顎 40.0%, 56.2%
(ヒトに植立されたチタンインプラントー骨界面の経年的な
組織形態学的観察.坪井陽一 他、52-56,
先端医療シリーズ・歯科医学1,歯科インプラント,2000)

【インプラント周囲の骨創傷治癒】
  1. インプラント植立後の1年間から1年半はインプラント周囲の骨創は治癒していない
  2. インプラントの骨接触率や骨占有率は、最初の1年間まで
     40%程度と低く、それ以降で70−80%と高くなり、
     インプラント周囲の骨が安定するには負荷後約1年が必要とされる
(ヒトに植立されたチタンインプラントー骨界面の経年的な
組織形態学的観察.坪井陽一 他、52-56,
先端医療シリーズ・歯科医学1,歯科インプラント,2000)

【微小循環(microcirculation)】

  1. 血液と臓器組織との間物質交換が行われる微小な領域をいう
  2. 細動脈、毛細血管、細静脈、毛細リンパ管
  3. 体液の循環調節
  4. 細動脈の血管平滑筋の収縮拡張
【微小循環の特徴】
  1. 口径100−200μの微小血管あるいは末梢血管で行われる
  2. 組織内に分布する微小血管の分布密度は高い
  3. 各組織・臓器の代謝活性を反映した特徴のある分布形態(血管構築あるいは血管網)を示す
  4. 外部刺激や内外環境の変化に対応して血管口径、走行や分布密度を変えて血流量を調節している
  5. 血管分布形態から逆に、組織が置かれている環境が推察できる
【血管鋳型法】
  1. 血管内にレジンを注入して硬化させた後、酸やアルカリで全ての生体組織を溶かし、血管内レジンだけを残す
  2. 改良血管鋳型法
      ①動脈系と静脈系で異なる血管内壁の微細な構造を、血管鋳型表面に
        鮮明に印象できる工夫をした
      ②焦点深度の大きい走査型電子顕微鏡で観察することにより、瞬時に
       細動脈、毛細血管、細静脈の同定を可能にした
      ③同時に骨などの硬組織を血管鋳型と一緒に残すことにより、
       血管分布と組織標本との対比関係が観察できるようになった

【インプラント周囲の微小循環】
  1. インプラント植立時に顎骨内に形成された埋入窩の治癒
  2. 新生骨によるインプラントの被包化
  3. 咬合機能下における血管構築の推移
【イヌを使用した実験成績】
  1. 下顎骨に限定した歯槽骨の微小循環論
  2. インプラント植立後の骨被包化に伴う微小循環の変化
  3. 咬合機能下における微小循環の維持・役割
【骨接合率と血管分布数】
  1. 骨接合率が高くなるほど血管分布数は減少する
  2. 周囲の広い範囲に血管が存在しないと仮定すると、一度作られた骨は
     新しい骨に置き換わることができず、細胞内成分のなくなった骨は
     ミイラ骨として生き続けなければならない

  3. 微小循環からみると、インプラント界面はこれに近い状態にあると言える
(インプラントの微小循環.岸 好彰 他、120-126,
先端医療シリーズ・歯科医学1,歯科インプラント,2000)