学会報告

学会報告No.1

2015.9.13 【筒井照子先生函館特別講演会】 

「歯科臨床に残されたもの」—患者の訴えから病態を探すー
前日に函館入りしました。北大の学生時代は、函館は札幌までの通過地点に過ぎなかったので、夜行列車に函館で乗車して朝6時頃に札幌着でした。札幌からの帰省のときは、朝6時頃に函館に到着して駅で連絡船の出発を待っていました。大間からのフェリーを利用するときもありました。

会場変更についてはFaxで送られてきていましたが、あわてて家を出たせいかそれを忘れたようです。7時頃に朝食を食べて、8時35分頃に会場の函館歯科医師会館に着きました。

玄関に到着すると、開始は10時だということでした。2階の会場では会場づくりのかたわら、当日先行発売予定の「包括歯科臨床」の続編「包括歯科臨床Ⅱ 顎口腔機能の診断と回復」が段ボール箱から出されたところでした。
早速買い求めて読み始めました。開始の10時まで100ページほど読みました。

顎口腔機能の診断と回復

[税別42,000円とやや高額に思われる方もいらっしゃると思いますが、名著です。症例数の多さ、内容の豊富さ、レベルの高さを考えると高くはありません。]

昼食をはさんで午前2時間、午後4時間の濃厚な講演でした。濃厚なというのは受講者の我々にとってはという意味で、演者の筒井照子先生にとっては軽いフットワークだったでしょう。時折り知り合いの先生に声をかけられて終始くつろいだ雰囲気の中で話されました。

講演が終わってサイン会が始まりました。係の人に聞くと、正式の発売日は10月10日で、今回が発売初日だということでした。ということは、もしかしてと係の人に確認すると、図らずも私は「発売第一号」になりました。
早速、筒井照子先生にサインをお願いしました。それが下記です。

早速、筒井照子先生にサインをお願いしました。

[講演要旨]
(パンフレットから筒井輝子先生ご自身の要約を記載いたします。)
歯科臨床とは、病態に陥った原因を探し、取り除き、生体の治癒能を引き出しながら的確な修復処置を行い、さらに治癒能を高めていくものでしょう。歯科の特殊性は硬組織「元の形に戻す」という修復処置が必要であるところが一般医科との違いなのでしょうが、あまりにもその部分だけ浮き上がって見えていたかもしれません。生体を治癒に導くには、Stomatology(口腔医学)とDentistry(歯科修復学)のバランスのとれた両輪が必要です。

前者を生理咬合論での病態解明、後者を補綴学的咬合論での修復処置と位置づけました。私は前者を自分のライフワークとして来ましたが、結局「患者の訴え(narrative)から形態異常を見つけ、evidenceに置き換え、分類し、原因を確かめ、診査、診断につなげていくこと」という医療としてベーシックな手順を確認しただけのことでした。今回の講演を機に、皆様にご理解頂けることを願っております。

私は筒井照子先生のご講演は4度目です。最初は2005年の東北矯正学会の特別講演で、この年にナソヘキサグラフⅡ(顎運動検査装置)とオクルーザー(咬合力測定装置)さらに重心動揺計(グラヴィコーダー)を購入しました。2度目は日本顎咬合学会、それから今年の仙台が3度目です。いつ拝聴してもわかりやすい納得できるご講演です。ただ論文•著書は1990年代のものからほとんど読ませていただいていました。

ここまで書いてきて「包括歯科臨床Ⅱ 顎口腔機能の診断と回復」を全部読んでからと思い、読破することに専念し、26日午後8時30分に447ページ1回目を読了しました。最終の446と447ページに本講演のテーマについて記載されています。

「歯科臨床にのこされたもの」とは
1. 下顎位の捉え方
2. 咬合面形態の捉え方
3. Extra oral pressuresによる口腔崩壊
4. 生体力学—リモデリング
という4つのテーマです。

その基本的なベースは、石原寿郎先生の「臨床家のためのオクルージョン」にあり、これについては「包括歯科臨床Ⅱ 顎口腔機能の診断と回復」の序文の「二つの咬合学—序文に代えて」に説明されています。

二つの咬合学とは、病態におちいった原因を探す咬合学を「生理学的な咬合学」であり、修復のための咬合学が「補綴的咬合学」であり、これまでの咬合論は後者に偏っていたという事実に2007年に気づいたそうです。このことについてはご講演の中でも何度も説明されていました。

この本は最終ページからまた序文に戻るようになっています。つまり、繰り返し読むようにというご教示が仕掛けられています。

学会報告No.2

2015.10.11 【第33回小児歯科学会北日本地方会】 

今年は、10月11日に福島県いわき市で行なわれました。
2015年10月11日 小児歯科学会

「咀嚼癖やブラキシズムの影響と予防」というタイトルで発表してきました。
乳幼児期の咀嚼癖や歯ぎしりは、気づかずに放置されることが多いので、この時期からの予防が大切であるという主旨で口演しました。

11月11日、第二田名部小学校の就学時健診がありましたが、歯ぎしりをしている子どもさんが20人ほどいました。気づいていないお母さんもいらっしゃいました。また発育空隙がほとんど見られず歯並びへの影響が懸念される子どもさんが6—7割以上でした。
当院で治療中の子どもさんも数人いました。しかし、大多数のお母さんには、今から拡大床の夜だけの装着で、将来の矯正治療を回避できるのに、理解されていないのが残念でした。

「咀嚼癖やブラキシズムといった『咬合力の癖』は、頭蓋顔面複合体の偏位•変形をもたらすが、頭蓋顔面複合体の上部の咀嚼側は下降し、下部は上昇する。適度の力で左右均等にゆっくりと咀嚼することが、頭蓋顔面複合体のバランスのよい発育を促す」という結論でした。

印象に残った講演を紹介します。
日本歯科大学の小松崎明先生の「社会的引きこもり者の歯科保健医療」
口腔清掃が全く行われないとどうなるかという症例には、少なからずショックを受けました。このような人たちにどう対応すべきかというお手本を示していただきました。

30年ぶりで北大の同級生に会いました。向こうから声をかけられなければわかりませんでした。彼は、プログラムで私の名前を見つけて捜していたようです。同級生の顔貌の30年の変化にはビックリしました。

学会報告No.3

2015.10.24・25 【平成27年度補綴歯科学会 東北・北海道支部学術大会】 

10月24日・25日は盛岡で補綴学会がありました。補綴というのは、入れ歯やクラウン・ブリッジを専門とする学会です。
2015年10月24・25日 平成27年度補綴歯科学会 東北・北海道支部学術大会_01

25日の盛岡は寒い朝でした。会場入り口には数十人が、寒さに震えながら、入り口の扉が開く時を待っていました。ふと見ると、街路樹の、高さ2メートルほどの小さなコブシが晩秋の寒さに耐えているようでした。

昨年まで6年間続けて演題発表していましたが、現在は膨大なデータ整理中です。今年は一般口演6題、ポスター発表14題の発表がありました。

印象に残ったのは、東北大学教授の江草宏先生の「iPS細胞技術が描く歯科医療の未来」という講演でした。iPS細胞の無限の可能性に期待するところ大であり、今後の再生医療の花形といっても過言ではありません。ガン化などのクリアすべき課題はあるが、究極の再生医療となるでしょう。

デジタル機器の応用が今学会のテーマでありましたが、デジタル機器の欠点に触れたものはありませんでした。頭部レントゲンのアナログ画像とデジタル画像を比較すると、デジタルは丸みをおびており、デジタル画像は外後頭隆起や顎角部の画像が実態を反映していません。

詳細は【頭蓋顔面複合体の偏位変形基づく保存・補綴治療】を読んで見て下さい。上記の中から34歳男性の外後頭隆起と44歳男性の顎角部のアナログ画像を下記に引用しました。デジタル画像では得られないものです。

2015年10月24・25日 平成27年度補綴歯科学会 東北・北海道支部学術大会_02

2015年10月24・25日 平成27年度補綴歯科学会 東北・北海道支部学術大会_03

学会報告No.4

2015.11.21・22 【第35回日本口腔インプラント学会東北・北海道支部学術大会】 

11月21日と22日の両日、仙台国際センターでインプラント学会が開催されました。不況のためか、出足は鈍く、土曜日の午前中は閑散としていました。しかし、午後になっていつもの雰囲気を取り戻しました。
第35回日本口腔インプラント学会東北・北海道支部学術大会

大会長は仙台の古澤先生でしたが、午後になって安心されたようでした。最終的には300人を越える人数が集まりました。口演43題、ポスター発表5題の発表がありました。私も1題発表しました。

母校の北大の名誉教授の久保木芳徳先生のご講演は、「生化学的立場からなぜチタンは骨に付くのか:『生きた骨と金属チタンとの強固な結合』の解明」でしたが、金属とチタンがなぜ結合するのか、という基本的なメカニズムがまだ解明されていないという、研究者の真摯な言葉が印象に残りました。だからこそインプラント治療は生体力学的に万全を尽くすべきであると思います。
大会テーマは「インプラント治療の原点に返って」でした。ただ、現在のインプラント治療には次の二つの大きな欠点があります。
  1. インプラントの土台である頭蓋顔面複合体の偏位・変形の問題が十分に把握されていないこと。
  2. 歯ぎしりや噛み癖などの影響が十分に研究されていないこと。
特に札幌で開業されている池田先生の研究では、歯ぎしりをしていない人はいないという報告があります。(「誰にでも見られる生体力学的習癖」の咬合力の癖①噛み癖、②ブラキシズム をご覧下さい)
また、頭蓋顔面複合体の偏位・変形の長期の研究の報告は、インプラント学会、補綴学会、顎変形症学会などの学会でも見られません。
この二つの欠点の研究は、約20年前から私が行っているものです。
しかし、そこまで考えてインプラント治療をしている先生は極めて少ないと、私は考えています。